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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁
なんとしても不気味は不気味である。ばあいによれば、相手と刺し違えんなどの料簡を抱いていないともかぎらない。
「……まだか、足利は」
そら寝も気が気でなく、顔の扇を除って、道誉はふと肩をもたげた。
次室にひかえていた侍女が、
「いえ、もうとうに」
と、それに答えた。
「仰せつけのまま、御家臣方が、さきほど大書院へお通し申しあげて、ただおひとり、お待ちをねがっておりまする」
いましがた、高氏は大書院へ通されていた。そのままで茶菓も出ない。寂然とひとりであった。
春の遅い伊吹は小鳥たちの目ざめもまだ新鮮だった。遠い山脈の襞に雪を見て高啼くのか、ここの天井にまで肌さむい谺とならずにいなかった。それと大庭をめぐる外曲輪の林の外を、折々、霜のうごくような兵の刀槍がチラチラ通る。いやおうなく身は敵中の感であった。
「ああ、あのときのままではある。自然はなにも変っていない」
高氏は十一年前を想いおこす。――十一年前の十八歳の春だった。
途上で佐々木道誉なる者と知り、みちびかれて、この伊吹城に、一夜の歓待をうけたあの日も、はじめて通された室は、この大書院であったと想う。
「その道誉とは、つきぬ奇縁か」