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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

北の彼方に、国分寺の址がある。――そして配所の帝――後醍醐の行宮には、その国分寺の一部を修理して宛て、外には柵をまわし、警固には、清高の部下を主力に、地方(本土)武士も加えて、おこたりない監視の下においてあった。――清高のいる甲ノ尾の居室から、赤い篝が見えもするほど、それは近い距離なのだった。

とにかく清高の立場は、生やさしいものでなく、その上にも新たなむずかしさを抱いて帰ったことだった。

「隠岐殿にはまだ、帝のご配所へもお顔出しもしておらんそうな」

「なにか重い幕命をうけて来られたのではないか?」

島全体は、さっそく危惧や不安の眼で彼をとりまいていた。

鎌倉へ喚ばれたからには、何か重大な密命があったにちがいない、とするのが島一般の観測だった。――事実、周囲も、

「お疲れか」

「お顔の色もひどく冴えぬ」

と、いっている。

ほんらいなら、帰島と共に、国分寺の配所へは、さっそくにも出向いて、

帝にはお変りないか。

侍座の公卿も。

また、典侍たちも。

と自身、警固の状なども任務上、見廻っておくべきであり、清高もそれを知らぬわけはない。しかし知りつつ、それをおこたって、甲ノ尾にひきこもっていたのだから、島じゅうの危惧臆測が昂まったのも当然だった。