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ちけむりてんめいじん

血煙天明陣

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《血煙天明陣(ちけむりてんめいじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 頁

青空文庫

九

城内の混乱に打ちまぎれ、うかうか城外へ出たらしい。

(もしものことがあろうものなら、取り返しのつかないことになる)

これという目標もなかったが、探し出すために貝十郎は、こうして城を出たのであった。

城外も恐ろしい混乱であった。人々が右往左往していた。

と、一人の町娘へ、貝十郎は眼をつけた。

九

(勘助に似ているが? 女勘助に!)

貝十郎はそう思った。

塩尻の社家主計の屋敷で、一旦勘助を捕えたが、大して憎くない男だったので、覚蔵の家の内土蔵の中へ、冬次郎様と熊太郎とを、翻弄的に閉じこめておいて、主計方へ帰って来た貝十郎は、その夜勘助を追い払った。

その勘助の娘姿が、群衆にまじって見えたのである。

(さてはいよいよ冬次郎様たちは、この城下へ来ておるな)

貝十郎はそう思った。

いずれは冬次郎様一行が、田沼を討とうお浦を奪おうと、自分たちの後を塩尻から追って、この小諸へ来ておるであろうとは、貝十郎は思っていたが、どこにどのように隠れ住んでいるものか、かいくれ消息がわからなかった。

ところが勘助を今見かけた。

ではいよいよ冬次郎様たちが、この城下に来ていることだけは、疑いないものということが出来る。