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ちけむりてんめいじん

血煙天明陣

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《血煙天明陣(ちけむりてんめいじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 頁

青空文庫

熊太郎を相手に飲んだ酒が、まだ仄かに顔に残っている。

その時襖がひっそりと開き、勘助が艶かしい姿を出した。

「ご来客にございます」

「ナニ、来客? この深夜に。……誰じゃ?」

と冬次郎は眉をひそめた。

勘助は眼を踊らせたが、

「大変なお方でございます。……十二神貝十郎殿で……」

「ナニ、十二神貝十郎が来た? ふうん」

と冬次郎は考え込んだが、

「ともかくも通すがよい」

「はい」

と引っ込んだ勘助と入れ違い、三十五、六の立派な武士が、おちつき払ってはいって来た。

「懐中に十手持っているか?」

率然と冬次郎が声をかけた。

貝十郎は敷居の此方、襖を背にして佇んだが、

「懐中は無一物ご覧の通り」

と、袖をパッパッと叩いて見せた。

莞爾とした微笑が広い額、やや削けた頬、角張った※(「臣+頁」、第4水準2-92-25)、鈎のような鼻、薄い唇、そういう顔に漂っている。

「『冬の夜の、ふけて氷の割るる音、心しずかに、聞き澄ますなり』さてはこういう心持ちで来たか?」

「殿の出ようによりましてはな……」

「わしは松平冬次郎だ」

「右近将監様の御曹司、風流洒落の貴公子として、穏しく殿がおわすなら、私も京伝や蜀山人の伴侶、雅号蝸牛の舎の貝十郎として、『冬の夜は、囲炉裏こそよし、落葉焚き、酒の肴に、栗焼かむもの』