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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
線上閱讀佐々木 味津三《旗本退屈男(はたもとたいくつおとこ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 240,656 字 · 478 頁
早う行け」
灯影一ツ洩れない暗い玄関先へ、主水之介はずかずかと這入りました。
右手の寒竹の繁みが、ザアッと鳴った。
生き埋めの井戸の上のあの繁みなのです。
しかし、何も出たわけではない。黒い影も白い影も何の影もない。
うちの中もしいんと静まり返っているのです。
仔細にのぞいてみると、奥の座敷あたりに灯の影がある。
退屈男はどんどんと上がりました。
梅甫と小芳とがその灯の蔭で抱き合って、びっくりしながら、青ざめつ、目をみはりつつ、ふるえているのです。
「どうした!」
「………?」
「何をふるえているのじゃ。昼間小屋で会うた主水之介ぞよ。どうしたのじゃ」
「あの、ほ、ほんとに、傷のお殿様でござりますか!」
「おかしなことを申すのう、主水之介はふたりない。兄が駈けこんで来たゆえ参ったのじゃ。何を怕がっているぞよ」
「兄!……。あの、十五郎がいったんでござりまするか!」
「そうよ。ほんの今深川まで血を浴びて身共を追っかけて来たゆえ、眉間傷の供養にやって来たのじゃ。何をそのようにびっくりしているのじゃ」
「いいえ! そ、そんな馬鹿なことはありませぬ! ある筈がござりませぬ!」