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はたもとたいくつおとこ

旗本退屈男

佐々木 味津三

線上閱讀佐々木 味津三《旗本退屈男(はたもとたいくつおとこ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 240,656 字 · 478 頁

青空文庫

「おかえり遊ばしませ……」

「何じゃい。気の抜けたころおかえり遊ばせもないもんじゃ。煮て喰うぞ。アッハハハ。兄が留守してうれしかったか」

「ああいうことばっかり……。ご機嫌でござりますのな」

「機嫌がようてはわるいかよ」

「またあんなことばっかり……。どこへお越しでござりました」

「あっちへいってのう」

「どこのあっちでござります」

「鼻の先の向いたあっちよ」

「またあんなことばっかり……。わたし、もう知りませぬ」

「わたしもう知りませぬ。わッははは。怒ったのう。おいちゃいちゃの巴御前、兄が留守したとても、あんまり京弥とおいちゃいちゃをしてはいかんぞよ。兄はすばらしい恋の鞘当買うてのう。久方ぶりで眉間傷が大啼きしそうゆえ上機嫌じゃ。先ず早ければあすの朝、お膳立てに手間をとれば夕方あたり、――果報は寝て待てじゃ。床取れい」

心待ちしながら上機嫌でその朝を迎えたのに、しかし腰本治右衛門からは、何の音沙汰もないのです。

夕方までには、何か仕かけて来るだろうと待っていたが、やはりないのでした。

二日経っても来ない。

三日経っても来ない。

「腰本治右は意気地がのうても、娘は将軍家の息がかかっておるという話じゃからのう、おてかけ馬に乗って来そうなものじゃが――」