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あさくさふどき
浅草風土記
久保田 万太郎
線上閱讀久保田 万太郎《浅草風土記(あさくさふどき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,294 字 · 318 頁
の時分、いまの木村屋のところが「写真屋」だったのである。東京名所だの役者だのの写真をうる店だったのである。――いかに夢中で、吉右衛門だの、小伝次だの、宗之助だの、当時浅草座出勤少年俳優の写真をわたしは買込んだことだろう。そのまえを通れば必ずわたしは祖母をせがんだ。――いうまでもなく絵葉書のまだ出来ない時代である。――絵葉書の出来たのはそのあと六七年たってからである。
……その「写真屋」(その店の名まえを忘れたのは残念である)の角をしるこやの「秋茂登」のほうへ曲り、「岡田」の屋根の両方のはじにくッついた鯛の装飾をみながら弁天山の裾をまわり、いまは酒やになった米屋の角を馬道の往来へ出ると、学校のまえの銀杏の梢がすぐもうそこにみえたものである。わたしの足はおのずと早くなった。――そのころ、浅草学校、いまのようにまだ味噌屋の「万久」の通りに門をもっていなかった。――宿屋の「釜屋」のならびにいまの半分もない小さな門しかもっていなかった。――ということは、だから、その門の方を向いて教場の窓からみると、その銀杏の梢のかげに、五重の塔の青い屋根が絵のようにいつもくっきり浮んでいた。