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あさくさふどき
浅草風土記
久保田 万太郎
線上閱讀久保田 万太郎《浅草風土記(あさくさふどき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,294 字 · 318 頁
ただし、そのフライ、ぼくのその時代には、カツレツとともに、八銭だか十銭だかだった。しかし、内野君の時代には、十五銭になっていたという。……ぼくの時代には、ビフテキだけが十五銭で、その店のメニュー中、最も高額なものだった。
ついでながら、六区の池のまえにあったある店というのは“雑居屋”という店で、ちんや横町の浪花ぶしの定席の下にあった店というのは、勿論、名まえはあったのだろうが、だれも名まえはいわず、ただ“寄席の下の洋食屋”とだけでとおっていた。すなわち、“新恵比寿亭”という寄席の側面に……その建物の一部に、薄汚れた白いカナキンのカーテンを下げた、床見世同然の店だったのである。
あるとき、たまたま、この店で、いつもハヤシライスでもあるまいと、ライスカレーを註文した。やがて運ばれて来た皿をみると、カレーのうえに、何んと、割ったまんまのタマゴがのっていたではないか……
ぼくは、おもわず、あッと思ったが、後年、年、三十にして、はじめて大阪の土をふんだとき、北の新地……だったと思う……の大きな西洋料理屋で、それと同じ手口のライスカレーにめぐり逢った。このときは、あッと思う代りに、これが大阪だ、大阪とはこうしたところなのだ、と、ひそかにぼくは合点した……ことをおぼえている。