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あさくさふどき

浅草風土記

久保田 万太郎

線上閱讀久保田 万太郎《浅草風土記(あさくさふどき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,294 字 · 318 頁

青空文庫

、といった感じの、みるからコッテリしたハヤシライスを、ときどきおもいだすのである。そして、どうしてむかしは、あんなにまで、しんそこうまいものがあったのだろうと、ひそかにぼくは嘆くのである。

遮莫――

カツ、テキ、ハヤシ、キャベツ巻。……ところどころソースのしみによごれた白いテーブルかけへの郷愁よ……

西洋菓子といえば、カステラと、ワッフルと、シュークリーム……それッきりしか、ぼくは、知らなかったのである。……コーヒーというものは、角砂糖を熱い湯に溶かせばできるものと、ぼくは、おもっていたのである。……そうしたぼくだからこそ、

大溝の水撒く夏に入りにけり

いまだに、むかしの浅草をわすれ兼ねての、こうした句もできるのかも知れない。”

このなかにでて来る、仲見世の、「天勇」の横町にあったある店というのが、内野君のいったその“比良恵軒”なのである。そして、ぼくのよろこんだ、焦げめのつくほどコロコロに揚がった蠣のフライを、内野君もまた、十幾年を経たあとの時代に於て、ぼくのように、あるいは、ぼく以上に、これをよろこんで賞味したのである。……浅草というところには、おのずから、そうした伝統がひそかな水尾をひいているのだ、という一つの語り草にすることが出来よう。