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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

宮方について働け。いまからでも」

そのとき、帝の横顔からあたりの木々の肌までが赤く染まったように見えた。どこかに大きな火の手があがって、夜空を焦がしていたのである。能登はそれを知るとおどり起って、牛のようにあばれかけた。

「浦屋敷だっ、別府の柵が焼けている!」

けれど途端に、彼はどっちへも動けなかった。しずかに迫って来た人数の枠の中におかれていた。少なくも二十人ちかいかと思われる人の輪であり、そして一部の人影は早くも帝を擁して、

「いざ」

とばかり、西の方へ走り出していた。

後醍醐は跣足になられた。

走りながら大口袴をくくし上げて、まわりの顔へ。

「妃たちもあとから来るであろうな」

「まいられます」

「足弱な三名が三名とも、洩れなく追っついて来られようか」

「お案じにはおよびません」

「行房と忠顕も?」

「はや今ごろは、小屋をやぶって、おあとを慕っておりましょう」

答える一語一語はみな声がちがっている。どれも若い、そしてたのもしげな語気で、帝をはげまして行くのだった。

その中には、成田小三郎の顔がみえる。

また土着の島武士、近藤弥四郎、村上六郎なども加わっていた。