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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

しかし師直は辛抱づよく彼の肴になりながらも、折々、道化にことよせては、辛辣に相手を揶揄の手玉に取り、しかも決して怒らせない。

見ようによれば、これは当代武家極道の両雄が、一方は於呂知を主将とする妓陣、一方は白龍を将とする妓陣、二つにわかれて、杯を盾とし、舌を矢として、虚々実々の婆娑羅合戦を展じたものといえなくもない。

なにしろ男女ともみな泥酔した。この宵、妓家の蓄えの大きな酒甕は、幾壺をカラにしたことか。

しかも、灯を見ると、道誉は、ひょろけもせずに立ち上がって、

「陪臣(師直をさす)。馬を曳け、もう帰るぞ」

と、外へ出た。

師直もまた、泥酔はしたが、正気は失っていない様子で、

「心得まいた。鵺殿のお馬、狒々が口を取って、途中まで同道つかまつらん」

とばかり、狩衣の片肌外して、駒の背へ道誉を乗せ、蹌踉、闇の道へ引ッぱり出した。

どこなのか、わからない。

滑川の水音だけがどこかでする。

「師直。いやさ陪臣!」

「なんでおざる」

「わしはもう大蔵などへは戻らんぞ。どこへわしを送る気だ」

「てまえも、お送りする気などはありません。お勝手に召されい」

「では何で、わしの駒の口輪など把って、従いて来るか」