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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

そして、とつぜん、

「こらっ」

と、大喝が出たので、人々はひやりとした。

「高氏っ、どうしたのだ、儂が再三の使いにもかかわらず!」

「は。そのため、押して今日まかり出ました。家中一同、病を案じてくれますなれど、天下の大変、一身をかえりみている場合でもございませぬゆえ」

「どこがわるいのだ。こう打見たところ、どこがどうとも見えはせん」

「いや、ふと折には忘れますが、また俄に左の半身が萎え痺れてくるような奇病にござりまして」

「瘧か」

「さようかもしれませぬ。医師もわからぬと申しまする。まじないしてくれた祈祷師は、犬神のたたりだろうと申しますが」

「犬神の」

「されば、遠いいぜん、犬に噛まれた歯形の痣が、いまも左の手首に消えていませぬ。恐ろしいものでございまする」

「犬神はこの高時の守護神だ。高時に不忠をなしたやつにはかならず祟る。高氏、思いあたることもなくはないな」

「は」

「それだわえ! いやそれなら仮病ではなかったかも知れんぞ。足利のひきこもりは仮病なりと、もっぱら、そこらでは蔭口しておったが」

左右の側近輩はぎょッと顔から顔へ波騒をよびおこした。明らかなうろたえが表に出た。