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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁
「ご帰館だ」
「いよいよか」
家中たちの足音にはもう戦場へつながっているひびきがある。
おおぜいの一家眷属にかこまれて、おくへ入った高氏のおもてには、かつての“ぶらり駒”の人ともみえぬ悽愴な色があった。じきに夏ではあるが汗さえひたいに光っていた。
「暑いのだ、先に着がえる」
声のするあたりで、登子は侍女のさしずをしながら、共に自分も忙しげにしていた。
「ご首尾、どうあったかと、みなもお案じいたしておりました」
「なにがよ」
「あまりに遅い御退出なので」
「えらかったわえ。じつは病人のはずだからな」
高氏は廊へ出てもろ肌をぬぎ、熱い湯のしぼりで、顔をふき、背を拭わせた。それから一ト間のうちで、着がえをすますやいな、
「直義、いたか」
「ここにおります」
「こっちへ入ってくれい」
「兄者、ご苦労にぞんじまする」
「これしきは何でもない」
「御前、いかがでございましたな」
「まずは、おぬしも察していたようなものだったよ。ただ二つの難題だけでな」
「いかなる御難題を」
「あとではなす。――とりあえず、陣ぶれしておけ」
「では、ご決定で」
「む、きまった。明朝辰ノ刻ここを発足する。諸事はかねがねすすめておいた運びどおりでよい」