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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

暗い溝崖で、したたか奔馬の背から振り落され、右の肩を打ち、右額へも、大きな擦過傷を負ったうえに、念入りに風邪までひきこんでしまったのだ。

このごろ、風邪はややよく、邸内でぶらぶらしていたが、頭の繃帯はまだとれていない。

もちろん、見栄坊な彼、

「このていでは」

と、まだ柳営へも出なかった。

年暮から出仕を欠いている彼へ、柳営の高時からは、

「はやく顔をみせよ」

と、慰問の使いは度々であり、道誉はあの日の報告を、

「不審重々のまま、いずれ君前にまかり出て、つぶさに言上申しあげまする」

とだけ、つたえてある。

もちろん、高氏の仮病を、彼は弁護しようなどとは思っていない。むしろ、

「どうして、この報復を」

と、呪っていた。

高氏はおもしろい奴、行く末なにか大ばくちでも打ちそうな奴。利用すべき男で、敵にまわすべきではない。

従来は、こっちでやや男惚れの嫌いがあった。まま女讐とみたり出世讐とそねんでも、また時には恩を売って彼の歓心を買おうともし、将来の提携だけは失うまいとしていた道誉だったのである。が今は、

「敵だ」

と、はっきり彼に見切りをつけた。そして、

「しょせん、高氏とは、どっちも相容れぬものをもっているのだ。