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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Read 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 150,635 characters · 306 screens
三
抜いても抜いても伸びてくる雑草のように、未熟から脱けられない。迷妄から離れられない。邪心の濁りから澄みきれない。
こんなことで、剣の工夫などなろうか。
時には、諦めて、捨てようとした。
しかし。
剣を捨てたら、自己の醜さを、明らかに、自己に映してくれるものは無くなる気もする。
剣は鏡だと思う。
明澄な剣。――純一に心を研ぎすまそうとする剣。不断な心の緊張。
その道を捨てたら、何が、自分を救ってくれよう。――亡父のいた時は、亡父の訓誡に、たえず歪みを撓められていたが。
……などとこの日頃、頻りと思い悩んでいた折も折である。宗厳は、
「抑、どんな人物か」
と、客の伊勢守を想像しながら、出迎えのため、彼方へ足早に歩いてゆく間も、何か少年じみた動悸さえ抱いていた。
三
この山は古い、砦作りの城も古い。
柳生一族が、この土地に住みはじめたのは、平将門の乱があった承平、天慶の時代からであった。
氏は、菅原の系類で、遠祖は、春日神社の神職をしていたが――武家勃興の機運から、ここの城寨に拠って、弓矢を兼ね、いつか豪族となって、源頼朝の覇が成った時、初めて柳生谷三千石を本領と扶持された家がらであった。