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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Read 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 150,635 characters · 306 screens
六
途中、薩軍に発見されて捕われておるんじゃあるまいか」
「さあ、谷村伍長の結果だけが、今はこの孤城と、南下の途にある総督軍とをつなぐ一縷の希望ですが……その谷村計介が変装して鎮台を脱出してからも早一月の余にもなるが、杳として消息はなし、総督軍とも依然、何らの聯絡もとれません」
「ああ……味方の援軍がここに到る時は、遂に、三千の城兵は餓死した後か」
「もう着く頃でしょう。どこかに上陸中かも知れません」
「恃むまい。天ばかり見て待ちこがれても始まらん。兵隊が可憐しいが、餓死するまで戦おう。君も孤塁の鬼となってくれ」
「いうまでもありません。ただ如何せん、防禦に当っている兵も、供与してやる食糧がないので、きのうあたりから、生色なしです。弾音もまばらで力がない」
「……ぶつッ」
突然、児玉少佐も将軍も、凄じい爆風の土に顔を噴かれてよろめいた。近くの壁に砲弾が落ちたのである。
間歇的に起る午後の猛攻撃が始まったらしい。鉄砲弾の音響は、圧倒的に、包囲軍から発しられるものだった。
櫓は、常に標的になった。忽ち、驟雨のようにばしゃばしゃ撃ち注いでくる。
「あっ。いかん」
「どうなさいましたか、将軍」