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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Read 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 150,635 characters · 306 screens
三
とゆるされた例はなくても、彼女の心には、何の不足でもなかった。
四
鎌倉に帰った梶原景季は、頼朝へ、こう復命した。
「判官殿には、病中と仰せあって、なかなかお会い下さいません。遂に、強って御威光を以て、お目通りしましたところ、灸などすえておられ、御顔色も憔忰の態に見うけられましたが、一日食わず、一夜眠らず、灸などすえれば、病態は作られまする。――行家追討の御諚については、耳もかされず、疾く帰れとの御一言あったのみ、取りつく島もなく立戻りました」
それからまた、都での風聞として、義経の行装の豪奢、禁中の羽振り、日常の花奢など、問われないことまで告げた。
「そんな態か」
頼朝の顔いろは動いた。
「仙洞の御気色に諂い、武功に誇り、頼朝にも計らわず、五位の尉に昇るなど、身のほどを忘れた振舞、肉親とて、捨ておいては、覇業の障りになる。今のうちに、九郎冠者めを討って取れ」
下知は、武府に伝えられた。
和田、三浦、千葉、佐々木など、誰もその討手は辞退した。土佐房昌俊に命が下った。昌俊は、部下の藍沢次郎、真門太郎など八十余騎をひいて、京都へ馳せ上った。
(――鎌倉殿の討手が京へ急がれた)