Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Read 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 150,635 characters · 306 screens
陽なた竹
一
「わかった」
家康は、豁然と、眼をあげて、梢のあいだの碧い夏空を見入った。
「……そうか。ムム、そうか。いやよく相分った。宗矩の性質もおよそその言葉で察せらるる。では宗矩を、今日より江戸の秀忠へ、奉公に差出すこと、異存ないな」
「何とぞ、お伴いねがいまする。宗矩、そちも、よう心を定めておろうな」
「はい」宗矩は、明確に答えたが、身に過ぎた大任を、果たして充分に勤められるかどうか、さすがにやや不安ないろを面にかくしきれなかった。
「彼方の茶屋へ来ぬか。……茶などつかわそう。めでたい主従のかため」
家康が床几を立った頃、五郎右衛門は渋そうな眼をあいて、そのくせ、何もかも知っているように、取澄ました顔をしていた。
陽なた竹
一
二十六歳、初めて老父の膝を離れて、彼は「奉公」の生涯にはいった。世の中に立ったのである。
その又右衛門宗矩が、ちょうど三十歳となった年の六月には、主君家康の軍に従って、上杉景勝を討つため、野州小山の陣中に、一旗本として働いていた。
「柳生どの、柳生どの。御主君のお召しであるぞ。急いで――」
近習の一名に麾ねかれて、宗矩は、何事かと急いで、家康の幕営へ駈けて行った。