Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Read 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 150,635 characters · 306 screens
いや世間よりか、彼女自身のうちに、二十歳の折に、頭にふかく抉りこまれた深刻な観念が、ともすれば、生々と、疼いてくる。ひがんで来るのである。
「――わたくしは叛逆者の娘だ」
いけない! そう思いながら、消し去ることができなかった。何かの折、ふと、
「光秀」
とでも、人の口から洩らされると、匕首で胸を刺し貫かれたように、どきっとする。――それはもう意識のものでなく、後天的な習性にまでなっていた。
この苦患から救われなくては、明るく、和らかく、どうして良人に接して行かれよう。五人の子女に、よい母となって、教養を授けてゆかれよう。――また、その苦悩に自分の心が蝕まれてゆくのも辛い。家庭が畸形になりそうな気もするのが、われながら恐い。
迦羅奢は、遂に、その救いを見つけた。
信仰であった。――忠興の弟、興元も奉じているし、良人の友人で高槻の城主たる高山右近も入教している基督教であった。
矢もたてもなく、彼女は、新しい教義を求めて、大坂城下のセスベデスの教会堂へ通ったのである。――勿論、裏門表門に、昼夜警固の武士がいるので、忍んで出る苦心もなみたいていではなかった。