Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

けんのよんくんし

剣の四君子・日本名婦伝

吉川 英治

Read 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 150,635 characters · 306 screens

Aozora Bunko

二

胤栄は耳をすましていた。

時には、怪しむように、宗厳の面を凝視したが、また、頷いては聞き入った。

道を求める熾烈な人のすがたは、路傍の眼から見れば、狂人かと疑われさえするものである。しかし宝蔵院胤栄には解る。胤栄も道の人である。同情せずにはいられなかった。

「それにしても、余りな御卑下。いかに自省のお強い性質とはいえ」

と、彼は心のうちで呟いた。

宗厳は、ことばを続けて、

「つい、他事のみ申し上げたが、そうした自分の衷心です。……実は一昨日、伊勢守どのに拝顔の折、よほどお打明けして、と存じたが、貴僧にこう申すようには云えぬのでござった。――小城ではあるが、柳生ノ庄の主として、あの城に坐しておることが、もういけないのです。今日は改めて、ただ一介の修行中の者として出直して来た次第。願わくば伊勢守どのへお通じ下されて、ひと手、御指南にあずかり申したい」

と、云った。彼は、そう云い終ると、胤栄に対して、両手をついた。

二

渡り縁をこえた宝蔵坊の一棟に、上泉伊勢守は、もうだいぶ長いこと逗留している。

甥の疋田文五郎と、高弟の鈴木意伯をつれて、今、裏門のほうからそこへ帰って来た。