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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
Read 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 188,242 characters · 380 screens
三
……もっとも、毎月籤引があってそれに当った人間は、血を絞られなければならないけれど、千人余りの数の中から、たった五十人だけ選ばれるんだからな、容易なことでは当りそうにもない。俺はこの城へやって来てから、もうそろそろ五年になる」
「俺は今年で四年になる」
「俺は今年で七年になる」
「そうかと思うと信念という坊主は、来たその日に殺されたっけ」――「あれは後生が悪かったからさ」――「運の悪い人間なのだよ」
「娑婆の奴らに云ってやりたいよ。貧乏を下げて浮世にあるより、纐纈城へやって来いとな。これほどの贅沢をさせて貰って四年五年活きていられるなら、血を絞られたっていいじゃないかとな」
「そうともそうとも、その通りだ」
三
「安逸なる者よ寝床から起きよ。飽食の女よ口を洗え。慈悲に縋れ仏陀の慈悲に」
尼はまたもや叫び出した。
「また何か怒鳴り出したよ」――「でも尼としては別嬪だな。象牙のような肌をしている」――「そうだ随分美しい」
「纐纈城を逃げ出せよ。羅刹の巣窟を遁がれ出よ。汝悪魔纐纈城主よ!」
ピシッ、と劇しい鞭の音が、その瞬間聞こえて来た。血紅色の陣羽織を着た、付添いの武士が革の鞭で、尼の背中をくらわせたのである。