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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
Read 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 188,242 characters · 380 screens
二
「なにとぞ掟通りに遊ばすよう」
「しかし俺は悲しいのだ」
また信玄は暗然とした。
「甚太郎!」
と信玄は声を掛けた。
「はっ」
と云って辷り出たのは前髪立ちの小姓であった。
「そち追手に向かうよう」
信玄は厳然と命を下した。
「心得ましてござります」
十四歳の少年武士、高坂弾正の妾腹の息、高坂甚太郎はお受けをした。
「これよりすぐに打ち立つよう」
「かしこまってござります」
「去年の五月、端午の節句に、楯無しの鎧を盗み取ったような、素晴らしい機智を働かせて庄三郎を召し捕って参れよ」
「かしこまってござります」
一礼すると甚太郎は、スルスルとご前を辷り出たのである。
二
その日夕景、高坂邸から一人の鳥刺が旅立った。
変装した高坂甚太郎である。
それは可愛い鳥刺であった。頭には頭巾を冠っている。頭巾の色は緋無垢である。足には山袴を穿いていたが、それは樺色の鞣し革であった。亀甲形の葛の筒袖に萌黄の袖無しを纏っている。腰に付けたは獲物袋でそれに黐筒が添えてある。二間半の長黐棹、継ぎ差し自在に出来ていて、予備の棹は背に背負っている。
色白で円顔で、鼻高く唇薄く臙脂を塗けたように真紅である。