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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
Read 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 188,242 characters · 380 screens
三
誰も知ることは出来なかった。
そうして彼女も語らなかった。
三
甚太郎には珍らしかった。
で、能面の前に立ち、永い間眺めたりした。
とうとうある日月子へ訊いた。
「姉さん、姉さん、この面は?」一つの面を指さした。
「ああそれはね、鼻瘤悪尉」
「鼻瘤悪尉? 厭な名だなあ」甚太郎は愉快そうに笑い出した。
「玉の井や大社を舞う時にね、着けなければならない面なのよ」
「姉さん、姉さん、この面は?」
「ああそれはね、茗荷悪尉」
「変梃な名だなあ、茗荷悪尉だなんて」甚太郎はまたも哄笑した。
「張良や寝覚を舞う時にね、着けなければならない面なのよ」
「これは何んだろう、この面は?」
「ああそれはね、大悪尉」
「おやおややっぱり悪尉か」
「氷室を舞う時に着ける面」
「姉さん、姉さん、これはナーニ、この厭らしい女の面は?」
「鉄輪や橋姫に使う面よ。生成っていうの生成ってね」月子の説明は真面目であった。
「おやここに般若があらあ」
「葵の上、道成寺、そういうものに使うのです」
「姉さん、姉さん、この面は?」
「放生川の石王兵衛」
「どいつもこいつも変な名だなあ。これはナーニ、この面は?」
「黒塚に使う近江女」