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しんしゅうこうけつじょう

神州纐纈城

国枝 史郎

Read 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 188,242 characters · 380 screens

Aozora Bunko

二

だがそれも一声で止んだ。

と、鉄砲の音がした。神明の社の方角からであった。お館から繰り出された鉄砲足軽が、ぶっ放した鉄砲の音なのだろう。鉄砲の音は反響した。家、四辻、石垣、山、そういう物に反響した。その木精が止んだ時、静けさが一層静けくなり、暗さが一層暗くなった。

五人の者は塊まっていた。臭気が四辺へ広がった。臭気の持ち主の五人には、それが不快とも感じないらしい。

甲府城下そのものが、臭気と黴菌との巣窟なのであった。

その時またも子供が云った。

「お母様、お母様、寒いよう」

絶え入るような声であった。

と、新来の病人が云った。

「どれ、焚火でも焚こうではないか」

人の立ち上がる気勢がした。その辺を探る音がした。

「おや、ここに土塀がある。……おやここに門がある。……いったい誰の屋敷だろう?」

若者の答える声がした。

「一条様のお屋敷だよ」

「ああそうか、右衛門様のな」

板切れをひっ放す音がした。

「おい、お若いの、手伝ってくれ」

「何をするのだ? え、何を?」

「うん、焚物を目付けたのだ」

「枯木でもあるのか? 枯木でも?」

「土塀の屋根だ。構うものか」

「うんそうとも、構うものか」