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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
Read 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 188,242 characters · 380 screens
五
「思った通りだ! お前さんだったか」
「おお、これは!」とそれと同時に、蔵人は驚きの声を上げた。
「塚原小太郎義勝殿か!」
「俺だよ、卜伝だよ、驚いたかな」
「うん」と云ったが、にわかに笑い、「これは誰でも驚くよ。なんと思って出て来たな?」
「さればさ」と卜伝は睨むようにしたが、「お前の首を貰いに来たよ」
「こんな首をか。なんにするな」
「悪逆無道の痴者として、三条河原へ晒すのよ」
「おおそうか、面白いな」
「蔵人!」
と卜伝は叱咤した。
「冗談ではないぞ! 笑い事ではないのだ! いつから貴様は悪鬼になったな」
前半に手挿んだ小刀へピタリと手をかけたものである。
五
しかし蔵人は水のように、冷然として立っていた。と、傍の牀几を引き寄せ、それへ悠然と腰かけたが、
「まずお前も腰をかけろ。話は出来る。それからでもな」
「ならぬ!」と卜伝はにべもなく、「活ける人間の五臓を取って、薬を製するとは天魔羅刹、南蛮人なら知らぬこと、本朝では汝一人! 云い訳聞こう、あらば云え!」
「ははあ、それでやって来たのか。ご苦労であったな。だが卜伝!」
蔵人は相手を憐れむように、
「俺を咎めるその前に、自分自身を何故咎めぬ! いやいや決してお前ばかりではない、上杉公、武田公、毛利、島津、竜造寺、そういう奴ばらを何故咎めぬ! そいつらこそ真の殺人鬼だ!」