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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
Read 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 188,242 characters · 380 screens
七
変幻出没するそうだ。おっ! 出没で思い出した。蜈蚣衆を呼べ、蜈蚣衆を!」
隣室に詰めていた蜈蚣衆、その頭領の琢磨小次郎が、黒小袖に黒頭巾、黒の鼻緒の草鞋を穿き、黒の伊賀袴に黒手甲、眼だけ頭巾の隙から出し、膝行して末座へ平伏した。
当時忍術衆の心掛けとして、同じ家中の侍へも、生地の姿は見せなかった。生地の姿を知っているものは、同じ仲間の忍術衆だけで、主君といえども知らなかった。ただ細作として敵国へ向かう、その時ばかりご前へ出て、盃を貰うことになっていた。
それほど用心しないことには、細作として技倆を揮うことが、出来なかったに相違ない。
琢磨小次郎は琢磨流の始祖、容貌年齢は解らなかったが、身体は小さく敏捷であった。
「小次郎」と信玄は声を掛けた。「その方達一度に繰り出して、悪病の主を引っ捉えろ」
無言で恭しく一礼した。それから小次郎は女のような――もちろん拵えた声であるが、優しい声で言上した。
「忍術の秘訣は第一が小人数、で、私ともう一人、茣座右門と罷り越し、引っ捉えますでございます」
「おおそうか、それは勝手だ」
辷るように小次郎は退出した。
またもや後は森然となった。