Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

しんしゅうこうけつじょう

神州纐纈城

国枝 史郎

Read 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 188,242 characters · 380 screens

Aozora Bunko

どうもこいつがよくねえなあ」

彼はここで渋面を作った。三白眼が打ち顰んだ。

変に甘ったるい匂いがした。微風が花野を渡ったのであった。草花のこぼす匂いであった。

「と云って一旦引き受けたからは、目付かりませんでございます、などと云っては帰れねえ。考えて見りゃあ降参だよ」

ひどく心持ちが憂鬱になった。

「信玄公の坊主頭、飛んでもねえ事を云い付けやがった」

呪いたいような気持ちがした。

「そういう俺らも利口じゃあねえ。へいへいよろしゅうございます。二つ返辞で引受けたんだからなあ」

今度は自分を呪い出した。

「このままどこかへ行ってしめえてえ。フラフラフラッとどこかの国へ」

漂泊の情が起こって来た。

「何が甲府なんか面白いものか。気に食わねえ奴ばかり揃っている。ああどこかへ行きてえなあ」

彼は行き場所を考え出した。

少年にあり勝ちの空想が、次から次と美の国を産んだ。草双紙で見た竜宮が見えた。荘子で読んだ胡蝶の国が見えた。快川長老の説教で聞いた、極楽浄土が見えて来た。

美しい国ばかりが見えて来た。お菓子の山や蜜の川や、玩具の森が見えて来た。

どこへ行ってもよさそうであった。