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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
Read 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 188,242 characters · 380 screens
傍らの藪から鶯が鳴いた。声は老けてはいなかった。
「俺は確かに煤煙を見たよ」
ふと年長の傀儡師が云った。
「噂はまんざらでもなさそうだ」
「俺は松火の光を見たよ」若い方が忍び音で云った。「確かに夢見山の中腹でな。……そうさ、噂は本当らしい」
「俺も見たよ、松火の火をな」年長の傀儡師は頷いた。「諸方の国境で誘拐した、工人どもを警護して、兵器廠へ送る連中の松火の火だと睨んだがな」
「油断も隙も出来ないなあ、あの信玄の不道人奴」
「チラリと城下で聞いたんだが」年長の傀儡師は不安そうに、「戦車の模型が出来たそうだ」
「ふうん、そいつあ大変だなあ」
「何しろ勘助が付いているからなあ」
「信玄よりは恐ろしいよ」
「素晴らしい新武器だということだ」
「城下があんなでなかったら、俺は夢見山へ分け上り、信玄経営の兵器廠を、すっかり調べて来たんだがなあ」年下の傀儡師が残念そうに云った。
「夢見山へは上らせないそうだ」
「わざと誘拐されるのよ」
「一旦はいったら出られめえ」
「いずれ厳重には相違あるまいがな」
二人はここで沈黙した。
すぐ眼の前の藪の中から、子を連れた雉が現われた。
二人を見ると引っ込んだ。