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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Read 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 191,184 characters · 379 screens
二
別のお神さんがひやかすようにいった。
「ご免くださいまし」
と挨拶をして、町娘はそこを離れた。
それは女勘助であった。
あの夜織江を探して来て、この辺で返辞をする声を聞いた。が、駈けつけて来た時には、織江の姿は見えなかった。
家の方へ人をやって訊ねたところ、帰って来ないということであり、服部家はそのため上を下に、大騒ぎをしているということであった。
(どうも変だ)
と勘助は思い、もう一度様子を探ろうものと、こうして出かけて来たのであった。
お吉という妾の家の前を通り、貸家札の貼ってある家の前に立った。
(化物屋敷とは笑わせるな)
こんなことを思いながら佇んだが、やがて裏の方へ廻って行った。
神棚の祭ってあるお吉の家の茶の間に、九十郎は寝そべっていた。
二
※(歌記号、1-3-28)翼休めよ禿松、茂みにからむ忍び草、
ひょいと胴を膝から外し、お吉は三味線を押しやった。
「あたしゃア玉菊の意気が好きさ」
台から猪口を取り上げて、受け口でひどく仇っぽいが、少し大形の唇へあてた。
「あたしの肌へ灸をすえるんだよ、沢山の色餓鬼に見せてあげようッて、摺り物を配って人を集め、店の女郎を惣仕舞いにし、吸物酒肴本膳まで出し、すえている間半太夫、河東の、二人に浄瑠璃を語らせたっていうが、ご大相もない意気じゃアないか」