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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Read 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 191,184 characters · 379 screens
四
いってお吉は立ち上がろうとした。
と、その時ここら辺に住む、親子狐であるのであろう、三匹の狐が縁の上へ、ノッソリと姿を現わして、開けられてある雨戸の隙から、屋内を覗き窺った。
「あれ」
とさすがに気丈でも女、お吉は思わず声をあげ、範之丞の腕へ縋りついた。
とたんに狐の背景かのように、生い茂っている雑草が、枯れて茫々と乱れている庭を、パーッと赤い眼覚めるような色が――派手な衣裳を着た女の姿が稲妻のように駈け抜けた。
四
白昼とはいえ場所が場所――それも空井戸から燐火が燃えるの、屋根棟に女の姿が立つの、草原の中に白骨が、累々として積まれているのと、噂されているこの境地へ、野狐が現われたのさえ不気味だのに、若い女が派手な姿で、追われたかのように突然現われた。それも百姓一揆の群が、街道を城下へ寄せて行くというので、若い女の一人歩きなど、絶対に出来ないという恐怖の日に!
で、お吉も範之丞も、ハッとして顔を見合わせた。
やがてお吉はソロリと立ち、開けられた雨戸の際に立ち、戸外の様子をうかがった。
この家と並んで同じような、二軒の廃屋が立っていて、これも雨戸がたててあり、縁など腐ちてその縁の上まで、雑草が延びてかぶさっていた。