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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Read 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 191,184 characters · 379 screens
十四
諸大名、むしやうに憎む、七つ星、今しくじれば、下の仕合せ。
金とりて、田沼るる身の、にくさゆゑ、命捨てても、さのみをしまん」
「何んだ」
と冬次郎は眉をひそめていった。
「田沼の忰意知めが、佐野善左衛門に討たれた時に、市中へ張られた落首ではないか」
「御意、その通りにござります。……この事件以来田沼様には、不遇つづきにござります」
いって貝十郎は懐中から、もう一枚紙片を取り出して、清三郎の前へ置いた。
清三郎はそれを読んだ。
「田が沼と、濁る浮世に、ごもつとも、天も変るぞ、地には妖し」
「何んだそいつも落首ではないか。浅間山が爆発いたせし際に、田沼を罵って作られた落首だ」
「御意、その通りにござります。天変地妖の起こったをさえ、田沼様の咎にいたしまする、よき例の落首にござりまする」
「それがいったいどうしたというのだ?」
「これをお読みくださりませ」
こういってまたも貝十郎は、懐中からもう一枚紙片を取り出し、清三郎の前へ置いた。
清三郎は取り上げて読んだ。
「これやこの、酒も料理もへらされて、へるもへらぬも、お湯漬の腹」
「これも落首にござります」
貝十郎は自分でいった。