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ちけむりてんめいじん

血煙天明陣

国枝 史郎

Read 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 191,184 characters · 379 screens

Aozora Bunko

十一

が、春の雨であった。一雨ごとに育つ草木、一雨ごとに蕾をひらく花――その葉や茎や枝や花の馨しい香が空気に充ちて、いっそ清々しく感じられた。

と、その野を宿に添って、辿って行くらしい人物があった。傘にあたるささやかな雨音。濡れた草を踏む幽かな足音。

「はてな、不思議な歩き方ではあるぞ」

その人物は呟いて、じっと前方を隙かして見た。

それは十二神貝十郎であった。

十一

冬次郎方の動静をさぐりに、ふたたび出て行った桐島伴作が、深夜になっても帰って来ない。

(変事があったに相違ない)

部下思いの貝十郎であった。自身出て行って様子を見て来ようと、今出かけて来たところであった。

と暗中を前方から、忍術衆特有の横歩きで、風のように歩いて来る人の姿が――貝十郎その人が忍術を加味した、堤宝山流の達人だけに――感じ見え疑惑された。

傘をたたみ小脇にひっさげ、藪の蔭に佇んだ。

と、すぐにその横手を、辷るがように走って行った。

とたんに貝十郎は声をかけた。

「中身は二尺、鞘は四尺、鐺は頑丈に鋭く強く、地に立てるに適当であるはず。鍔は尋常より一廻り大きく、足かかっても辷らぬよう、刻み目多く刻してあるはず。