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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,130 characters · 288 screens
「せっかくのお言葉だが、あっしが世話をすると、植木がみんな枯れっちまいますよ」
ガラッ八は良心に愧じる様子もなく、つづけざまにお先煙草をくゆらして、貧乏ゆるぎをする風もありません。
「いい心掛けだ。――その気だからだんだん縁遠くなる」
「へッ、――縁遠くなる――と来たね。驚いたね、どうも」
八五郎はニヤリニヤリと顎を撫でております。
「先刻から、退屈を売物にしているようだが、いったい何か言いたい事でもあるのかい。物に遠慮のある性質でもあるめえ。用事があるなら、さっさと言ってしまったらどうだ」
「えらいッ、さすがは銭形の親分。天地見通しだ」
「馬鹿だなア」
「ね、親分、聞いたでしょう。麹町六丁目の娘殺し」
「聴いたよ。桜屋の評判娘がゆうべ人手に掛って死んだってね。――けさ八丁堀の組屋敷へ行くとその噂で持ちきりだ」
「虐たらしい殺しでしたよ。どんな怨みがあるか知らないが、十九になったばかりの小町娘――上新粉で拵えて色を差したような娘を、鉈や鉞で殺していいものか悪いものか――」
「待ちなよ八。口惜しがるのはお前の勝手だが、煙管の雁首で万年青の鉢を引っ叩かれちゃ、万年青も煙管も台なしだ」