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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,130 characters · 288 screens
四
一と瓶くみ上げて、一杯キューッと呑んだ平次、
「甘露甘露、なるほどこれは良い水だ」
十一月の水の味は格別だったのでしょう、平次は舌を鳴らしてもう一杯傾けます。
「親分、止しましょうよ。そいつは何杯呑んだって酔いはしませんぜ」
ガラッ八はそんな事を言って眺めているのです。
四
「銭形の親分さん」
目白坂まで来ると、後から追いすがり加減に声をかける者があります。
「越後屋さんじゃないか」
平次は足を淀ませました。
先刻庵室で挨拶した米屋の兼松が、何か言いたい事がある様子で後から来たのでした。
「下手人のお見込みが付きましたか、親分さん」
兼松は少し息をきらしております。
二十八九、せいぜい三十くらい、若いにしては分別者らしい男で、浅黒い引緊った顔にも、キリリと結んだ口にも、やり手らしい気魄があります。
「少しも判らない、困ったことに日が経ちすぎたよ」
妖艶なお小夜も知らず、その殺された後の惨澹たる有様も見なかった平次は、後から証拠をたぐるじれったさに閉口している様子です。
「御尤もですが、地主の寅吉さんだけは下手人じゃございませんよ、親分」
「それはどういうわけだ」