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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,130 characters · 288 screens
五
下っ引を二三人駆り集めて、走らせる心算でしょう。
五
「お秀」
手配が一段落になると、平次は静かに話を向けましたが、当のお秀は以ての外の不機嫌さです。
「ここは毎晩誰が泊るんだ」
「決っちゃいませんよ、相吉さんが泊ったり、弁次郎さんが泊ったり」
「それは何だ」
「相吉さんは私の従兄で、弁次郎は用心棒ですよ。――二人とも、いま駆け付けて面喰らってるじゃありませんか」
「どっちか相吉だ」
「あっしで」
平次の声に応じて出たのは、二十五六のちょっと肌合の意気な男でした。
「小遣はふんだんにあるのか」
「御冗談で、親分」
平次の唐突さに、相吉はすっかり面喰らっております。
「弁次郎は?」
「あっしで、ヘエ――」
ピョコピョコと三つ四つつづけざまにお辞儀をしたのは、三十二三の逞しい男。顎の四角なのと、眼の鋭いのと、法外に腰の低いのが、この男をひどく精力的に見せます。
「ドスを持っているかい」
「ヘエ――」
「出して見せな」
この問いも弁次郎を驚かすに十分です。
「用心棒が拳固一つということはあるまい、遠慮せずに出すがいい」
「ヘエ――」
弁次郎は観念したらしく、腹巻を捜って匕首を一口取出し、柄を逆にして、平次の掌の上に載せます。