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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,130 characters · 288 screens

Aozora Bunko

三

脇差は拭きもせずに放ってあるところを見ると、下手人が臆病で物馴れない様子もよく判ります。

「見付けたのは?」

「下女のお仲と申す者で」

「呼んで貰おうか」

「お仲、――そこに居るなら出て来るがいい。呼ばれてから、あわてて引っ込むやつがあるものか」

「ヘエ――」

佐助に叱られて、恐る恐る出て来たのは、二十四五の、ちょっと良い年増でした。

「けさ死骸を見付けた時の様子を、詳しく話してみるがいい」

平次は穏やかな調子で引出しにかかりました。

「雨戸を開けて、ヒョイと覗くと、――中は一パイの血で、梅吉どんが殺されているんです」

「さいしょから梅吉と判ったのか」

「いえ、初めは若旦那だと思いました。大きな声を出すと、皆んな飛んで来て、鍵が見えないのでコジ開けて入って、死骸を引起して初めて梅吉どんと判りました」

お仲の話はなかなか確りしております。

「この櫛は誰のだか知ってるかい」

「…………」

お仲は一文字に口を結んでしまいました。

「言いたくないと見えるね。まさかお前のじゃあるまいな」

「とんでもない、親分さん」

お仲はあわてて打ち消しました。

三

奉公人たちの説明で夜中人に知られずに、この囲いの前へ来られるのは、主人の三郎兵衛と、女房のお篠と、老番頭の佐助と、殺された梅吉と、幾太郎の妹のお栄と、幾太郎の許嫁のお桃と、下女のお仲だけと判り