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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,130 characters · 288 screens

Aozora Bunko

六

皆次は先を潜って弁解をしているのです。

六

翌る朝、三つ股の源吉のところへ泊っている平次のところへ、一番先に駆けつけたのは、越後屋の兼松でした。

「銭形の親分さん、困ったことが起りました」

米屋の主人の聡明な顔が、ひどく困惑しております。

「なんだえ、越後屋さん」

「庵室の鉄童さんが見えなくなりました」

「そうか」

平次はひどく落着いております。

「そいつが下手人で、危なくなって風をくらったんじゃあるまいね」

三つ股の源吉は半分顔を洗って飛出します。

「大丈夫だ、庵室から一と晩出なかったというのは本当だろう、鉄童は下手人じゃない。第一そんな虐たらしい殺しようをしたなら、返り血の始末だけでも大変だ。着のみ着のままの鉄童にはそんな暇はなかったはずだ。それに――」

平次は何か外の事を考えている様子です。

「じゃ、どこへ行ったんでしょう」

兼松はひどく気を揉んでいる様子です。

「こいつは言わない方がいいだろうと思ったが、――そんなに心配をするなら話してやろう。あの鉄童という人間は、自分の素姓が解りそうになって逃げ出したんだ」

「素姓?」

「どうかしたら、庵主の鉄心道人が逃がしたかも知れない」