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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,130 characters · 288 screens
六
「困ったことだな」
「何が困るんで? 親分」
「下手人は容易に挙がるまいよ。まア、時節を待つんだ」
平次は諦めた様子で、大きな欠伸をしました。
六
「た、大変っ」
その翌る朝、疾風のごとく飛び込んで来たのはガラッ八のあわてた姿です。
「どうした八、たいがい大変が舞い込む時分だと思って、その辺を片付けさしたところだ」
平次はさして驚く色もありません。
「あれ、驚かないんですかい、親分」
「林彦三郎が自首して出たんだろう。それくらいのことは見透しさ」
「有難いッ、――銭形の親分にも見込み違いがあるんだ。それがなかった日にゃ、こちとらが助からねえ」
ガラッ八はピョイと飛んで、自分の額を叩きます。
「何が違ったんだ」
「彦三郎は自首なんかしませんよ、――けさ神楽坂の裏路地で、こんどは下男の熊吉が殺されていたんで、――川波勝弥が殺されたのと同じ場所だ」
「刃物は?」
「こんどは匕首」
「前からか、後ろからか」
「前から喉笛を一と突きにやられていますよ」
「解った、――それじゃ大急ぎで、肴町の道場に見張りをおけ。下っ引を何人でも駆り出すんだ」
「合点」
「ちょっと待ってくれ、八」
「ヘエ――」