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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,130 characters · 288 screens
愚図愚図するにおいては、怨み重なる平次をこのお狩場の四郎が逆に縛るかも知れない、なんと驚いたか。
――こう書いてあるよ」
「そいつは親分」
ガラッ八はゴクリと固唾を呑みました。
「どうだ、お狩場の四郎の言い草じゃねえが、なんと驚いたか――と言いてえくらいのものだ」
平次は少し面白そうです。
「あの野郎はまだ生きていたんですね。――挙げる時は、ずいぶん骨を折らせたが」
三年前の大捕物で、ガラッ八は少しばかり怪我をしたことを思い出したのでした。
「縄抜けをして、どこかへ飛んだきり、死んだという噂を聴かないから、まだ生きていたんだろう。あれくらいの悪党になると、頭を潰しても死にきらないよ――いや、死んでも祟るかも知れない」
「蝮と間違えちゃいけません」
「のような悪党だったよ。生きていたら四十五六かな、まだ大した年じゃないはずだが、手紙の書きっ振りは巫山戯ているくせに愚痴っぽいところがある。――それにしても、柔か味のある良い筆蹟だな。泥棒などをするより、手習師匠にでもなるといいのに」
「泥棒の手紙を見て感心していちゃいけません。桜屋の娘を殺したのが、お狩場の四郎と解ったら親分もじっとしちゃいないでしょうね」