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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,130 characters · 288 screens

Aozora Bunko

や『クロイツェル・ソナタ』で降参して、『戦争と平和』は眺めるだけで四十年過ぎてしまった。フランスのものは、学校でフランス語をやった関係で非常に親しさを持っていたが、翻訳のあるものは、大抵翻訳でゴマ化し『ベラミー』などはその頃の当局がやかましくて翻訳がなかったから、原本の弁慶読みを始めたが、それもおしまいまでは続かなかった。

その頃私はもう激しい新聞記者の生活をしていたので、文芸に没頭する暇もなく、私の興味はまた元の探偵小説に還っていった。が、その頃の日本の探偵小説は、まだ貧弱で話にならず、ひどく歯痒がっていると、大正六年一月から、博文館の文芸倶楽部が、岡本綺堂の「半七捕物帳」の短篇連続を始めたのである。最初の一篇はなんであったか、私の記憶は覚束ないが、岡本経一氏の『綺堂年代記』によれば、第一篇は「お文の魂」で、第二篇は「石燈籠」であったということである。それから断続して、昭和十一年十一月の講談クラブまで、実に二十年間、六十八篇に及んだことは、なんという大きな収穫であったことだろう。量においても、質においても、まさにコナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」