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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,130 characters · 288 screens
お嬢さんの罪じゃない。川波勝弥が殺されたのは天罰だ。お嬢さんにも、林彦三郎さんにも罪はない」
「親分」
「林さんは何とかして助けて上げましょう。お嬢さんは道場へ帰って、何も言わずに葬式の仕度をして下さい」
「親分」
お半は泣いておりました。畳に突っ伏した顔はなかなか上がりません。
「八、もう日が暮れたろう。お嬢さんを肴町まで送って上げろ」
「ヘエ――」
「俺は八丁堀まで行って、笹野の旦那に申上げて、林さんの縄を解いて上げる」
三人はお静に送られて路地を出ました。
「お嬢さん」
平次は往来に立って牛込の方へ行くお半を呼び留めました。
「…………」
「林さんは立派な武士だ。嫌ったりしちゃ済みませんよ」
「…………」
「あの方は、黙って死罪になる気でいた。この恩返しはお嬢さんの胸にあることだ。お解りでしょうね、お嬢さん」
お半は首を垂れた様子です。梅二月、寒い風が吹いて、そうさせたのかも知れません。
*
「ね、親分あっしはどうしても解らねえ、川波勝弥を殺したのは誰でしょう」
事件が落着して、お半は林彦三郎を聟に迎えたと聴いた時、八五郎は絵解きをせがみました。
「解らないのかえ」