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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十)金色の処女
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十)金色の処女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 137,868 characters · 278 screens
六
「だって、こう言って来てるぜ、――こいつはいつもの手紙と筆蹟は違っているが、言うことは抜き差しのならねえ話だ。〈今夜山脇玄内は海真寺本堂を襲い、本尊弘法大師自刻の坐像を盗み出すはず。これは玄内は大師の帰依者だが、海真寺の住職は戒律を保たず、堕落僭上の沙汰があるので、尊い本尊を預けておけないからだ〉と書いてある」
「ヘエ――、あれが大師の帰依者で?」
「とにかく、俺は海真寺へ行かなきゃなるまい。どうだ、一緒に行ってみる気はないか、八」
「そいつは無理ですよ、親分」
「何が無理なんだ」
「今夜という今夜、八方から網を絞って、山脇玄内を隠れ家から挙げることになっているじゃありませんか」
「じゃ、勝手にするがよかろう」
「ヘエ――」
「その代り、山脇玄内を縛ったら、牛込見附の番所へ来い」
「ヘエ――」
六
平次が海真寺へ行ったのは、もう酉刻過ぎでした。
門前の花屋を覗いて、寺内を一と廻り、庫裡から本堂へ入って行くと、
「あ、銭形の親分さん、御苦労様で」
檀家総代、世話人、寺男の一隊が、住職から小僧を交えて、グルリと本尊の大師像を取囲み、怖ず怖ずながら次第に深くなる夜を迎えているのでした。