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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十)金色の処女
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十)金色の処女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 137,868 characters · 278 screens
三
「曲者の顔を見なかったのかい」
傷を見ながら平次は訊ねました。
「後ろから抛られたんで、何にも見ません」
「そいつは災難だったね。もっとも、大難が小難で済んだようなものだ。幸い、町内の外科が来ているから、手当して貰うがよかろう」
「有難うございます」
「ところで、曲者はいよいよ家の中に居るに決ったぞ。床を剥ぎ、天井へ潜り込んでも捜し出そう、八」
「おーい」
「どこに居るんだ」
「押入の中ですよ」
八五郎の返事は陰に籠りました。
「その意気だ、しっかり捜せ、――外から二三人呼び入れて手伝わせてもいい」
三
疑いは三人にかかりました。
多賀屋の外を、ウロウロしていた、やくざの信三郎と、髪結の浪蔵と、――これはお福の甘い言葉に取り逆上せて、是が非でも祝言を妨げようという仲間――。
あとの一人は、多賀屋の番頭で品吉、三十そこそこの平凡な男ですが、これもお福の笑顔に釣られて、多賀屋の養子になれるものと思い込んでいた男でした。
三人とも機会がありました。が、便所の草履をはいて細工をしたり、匕首を聟の部屋の花瓶に入れるようなことは、品吉でなければ出来ない芸当です。
「この野郎ですよ、親分、思い切り引っ叩いてみましょうか」