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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十)金色の処女
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十)金色の処女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 137,868 characters · 278 screens
四
「参りましょう。後と言わずに、今、すぐ」
平次は帯をキュッと締め直すと、羽織を引っかけて、石川孫三郎に従いました。
「親分」
後ろからガラッ八の八五郎。
「来るがよい、手が欲しくなるかも知れない。十手なんか要るものか、相手は御大身の旗本屋敷だ」
四
元町の一郭を占領した、宏大な横山主計の屋敷。平次とガラッ八は、用人石川孫三郎に案内されて、裏門からお勝手へ廻り、奉公人達の好奇の眼に迎えられて、奥の主人主計の部屋に通されました。
「平次――と申すか、宜しく頼むぞ。世間へ聞えては、当家の瑕瑾にも相成る、その辺抜かりなく――」
病床に半身を起したのは、頽然たる主人です。肝の病で久しく寝ていたのが、三日前怒りに任せて奥方を折檻し、引続く心痛に疲れ果てて、物を言うのもおっくうそう。
「畏まりました」
平次はそう言うより外にありません。孫三郎に目配せされて、早々に引下がると、次は若殿時之助、これは敷居際で黙礼しただけ。
「平次と申すそうだな。宜しく頼みますぞ」
時之助はそれでも優しく声を掛けます。二十五というにしては、ひどく若く見えるのは、心も身体も弱いせいでしょう。でも何となく清純な聡明な感じがして、平次には好感の持てる青年でした。