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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十)金色の処女

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十)金色の処女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 137,868 characters · 278 screens

Aozora Bunko

三

「いやな事だが、やりますよ。大きいお嬢さんの敵を討つためなら、これも仕方があるめえ。南無阿弥、南無――」

作松は念仏を称えながら、百合の死骸の首に縄を巻いてみせるのでした。

「なるほど、それなら遠くから投って、首へ引っ掛けられる、――お前はどこの生れだ」

佐吉は変なことを訊きました。

「信州ですよ、もっとも十七の時江戸へ出て、二十五年も奉公しているが――」

「すると前厄か」

「ヘエ――」

「信州にいる時は、ちょくちょくその投げ罠で獣を捕ったんだろう」

「時々はやりましたよ、親分」

「今でも、人間ぐらいなら捕れるだろうな」

「と、とんでもない」

作松は愕然としました。首尾よく佐吉の訊問の罠に掛ったのです。

「まアいい、――ところで庭木戸は内から閉っているようだが――」

「ここは滅多に開けません」

一色友衛はしかと言い切りました。

「下手人は家の中の者で、たった一人でいた者となると――」

佐吉の眼はともすれば継母の玉江と、下男の作松の面上に探り寄ります。

三

「親分、お助けを」

その日の夕刻、下男の作松は、辛くも、春日家を脱け出すと下谷竹町から神田明神下まで一気に飛んで、銭形平次の家へ転げ込んだのです。