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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十)金色の処女
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十)金色の処女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 137,868 characters · 278 screens
四
「御免」
思い切って飛込むと、中は空っぽ。突き当りの障子一パイに、書きも書いたり、淋漓とした大文字が数行。
盗んだ金を身に着けるなら、成瀬九十郎こんな貧乏はせぬ、盗賊を芸事と思う思わぬは其方の勝手だが、構えて師弟の道を踏み違えまいぞ、穴賢。
山脇玄内こと 成瀬九十郎
門弟次平こと 銭形平次殿へ
「ウーム」
平次は思わず唸りました。あまりにも鮮やかな背負い投げです。
四
それから五六日は何事もなく過ぎました。
「親分、あの娘はちょいと踏めたね」
ガラッ八は思い出したように変なことを言います。
「どこの娘だ」
「へッ、通じないような顔をすることはないでしょう、――左内坂のそれ」
「大泥棒の娘だよ、あれは」
「親が泥棒だって、娘は大丈夫で」
「馬鹿だなア」
「あの加奈とかいった娘に、もういちど逢いたいような気がしますよ。ちょいと淋しいが良い娘でしたね、夕顔の花のようで」
「夕顔の花と来たね」
「物の譬えですよ、親分」
「それほど執心なら、あの娘を捜してくれ。娘を捜し出せば、親の隠れ家も解るというものだろう」
「やってみましょうか」
「江戸は広いぜ、八」
そんな馬鹿なことを言っている時でした。