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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十)金色の処女
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十)金色の処女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 137,868 characters · 278 screens
銭形平次捕物控
一
これは銭形平次の最初の手柄話で、この事件が平次を有名にしたのです。この頃お静はまだ平次の女房になっていず、ガラッ八も現われてはおりません。
一
「平次、折入っての頼みだ、引受けてくれるか」
「ヘエ――」
銭形の平次は、相手の真意を測り兼ねて、そっと顔を上げました。二十四五の苦み走った好い男、藍微塵の狭い袷に膝小僧を押し隠して、弥蔵に馴れた手をソッと前に揃えます。
「一つ間違えば、御奉行朝倉石見守様は申すに及ばず、御老中方にとっても腹切り道具だ。押付けがましいが平次、命を投げ出すつもりでやってみてはくれまいか」
と言うのは、南町奉行与力の筆頭笹野新三郎、奉行朝倉石見守の智恵袋と言われたほどの人物ですが、不思議に高貴な人品骨柄です。
「頼むも頼まないもございません、先代から御恩になった旦那様の大事とあれば、平次の命なんざ物の数でもございません。どうぞ御遠慮なくおっしゃって下さいまし」
敷居の中へいざり入る平次、それをさし招くように座布団を滑り落ちた新三郎は、
「上様には、また雑司ヶ谷の御鷹狩を仰せ出された」
「エッ」
「先頃、雑司ヶ谷御鷹狩の節の騒ぎは、お前も聞いたであろう」