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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十)金色の処女
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十)金色の処女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 137,868 characters · 278 screens
「九十郎、俺を訴人したのは、お前だな」
山脇玄内の顔色がサッと変ると、激しい言葉が洩れました。
「いや違う、私ではない」
成瀬九十郎の、これが精一杯の弁解です。
その間に、ホロホロと涙をこぼしているのは、娘の加奈だけでした。その深刻な悲嘆の理由は、たぶん父も伯父も知らなかったでしょうが、平次だけは判然知っておりました。山脇玄内という兇賊を自分の伯父と知る由もないお加奈は、父に来た手紙を見て、――今夜海真寺を襲い、本尊を盗み出す――企てのあることを覚って、父を恐ろしい疑いから救うために、平次に密告の手紙を出したのです。
山脇玄内と成瀬九十郎は、それっきり引離されました。淋しく家路をたどる親娘の後ろから、平次は追いすがり加減に、
「成瀬先生、また参りますよ。忍術の稽古に」
こう声を掛けると、
「いや、もう忍術指南は止しじゃ」
成瀬九十郎は振り返りもせずに応えて、月のない神楽坂を登って行くのです。
*
「親分、あっしには少しも解らねえ、あれは一体どうしたことなんで?」
縄付を引渡した帰り、ガラッ八は平次に絵解きをせがみました。
「俺も解らなかったよ、――だが、成瀬九十郎という人間の人柄と、娘の人柄にどうも悪人らしくないところがあると思ったんだ。