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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十)金色の処女
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十)金色の処女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 137,868 characters · 278 screens
二
二
間もなく八五郎が帰って来ました。
「親分、済まねえが、ちょいと智恵を貸して下さい」
「何だ、もう見当が付く頃じゃないのか。嫁入り前の娘を殺す奴は、大抵決っているはずだ」
「それが一向決っていないから不思議で――」
「どうしたんだ」
「下手人の匂いのするのが多すぎるんですよ、親分」
ガラッ八は事件の外貌を一と通り説明しました。
娘の親の十三屋文吉というのは、向柳原の毛虫のように思われているかれこれ屋で、十三屋じゃない千三つ屋だといわれる五十男、娘のお曾与が不思議に美しく生れ付いたのを利用して、一番有利な取引を心掛け、とうとう小柳町の万両分限、伊丹屋駒次郎の嫁にするところまで漕ぎつけたのでした。
伊丹屋の先代、――この春死んだ駒次郎の父親が生きていたら、この祝言は成立たなかったでしょう。十三屋文吉のような、評判の悪い男の娘を嫁にすることは、お曾与がどんなに良い娘であったにしても、大地主で旧家で、神田で何番と指を折られる格式の伊丹屋にとっては、まことに我慢のならない事だったに違いありません。
駒次郎はまた典型的な道楽息子で、八五郎の言葉を借りて言えば、
「あれは馬鹿野郎ですよ、金で世間の女がどうにでもなると思ってやがる、――その金で自由になった女が、皆んな自分に血道をあげると思い込んでいるから凄まじいじゃありませんか