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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十)金色の処女
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十)金色の処女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 137,868 characters · 278 screens
「さて皆の衆、聴いてくれ」
貫兵衛は徳利を爺やから受取って、物々しく見得を切ります。
「やんややんや、お大尽のお言葉だ。皆んな静かにせい」
清五郎は真っ赤な顔を挙げて、七平の踊りとおりんの三味線を止めました。
「この中には、和蘭渡りの赤酒がある。ほんの少しばかりだが、その味の良さというものは、本当にこれこそ天の美禄というものだろう。ほんの一杯ずつだが、皆んなにわけて進ぜたい。さア、年頭の七平から」
貫兵衛はそう言いながら、同じギヤマンの腰高盃を取って、取巻の七平に差すのでした。
「有難いッ、伽羅大尽の果報にあやかってそれでは頂戴仕るとしましょうか、――おっと散ります、散ります」
野幇間を稼業のようにしている巴屋七平は、血のような赤酒を注がせて、少し光沢のよくなった額を、ピタピタと叩くのです。
「次は清五郎」
これは主人と同年輩の三十五六ですが、雑俳も、小唄も、嘘八百も、仕方噺も、音曲もいける天才的な道楽指南番で、七平に劣らず伽羅大尽に喰い下がっております。
「ヘエ――和蘭渡りの葡萄の酒。話には聞いたが、呑むのは初めて――それでは頂戴いたします、ヘエ――」
美しいお蔦にお酌をさせて、ビードロの盃になみなみと注いだ赤酒、唇まで持って行って、フト下へ置きました。